これから住宅を建てたいとお考えの人にとって、住宅展示場や完成見学会は、最新の情報が豊富にあるとても役立つ場所です。ただその一方で、その情報を上手に整理して利用しないと、情報量の多さに悩みが増えるということもあります。自分のペースで建築計画を進める上で、どのように活用するのが一番良いのかを確認しておくことは大切なことです。今回は、住宅展示場と完成見学会それぞれについて、メリット同時に、知っておきたいデメリットについてもまとめてみました。
住宅展示場のメリットは、何と言っても、一か所で複数の住宅会社のモデルルームを見学できることです。特に大手ハウスメーカーや地元の中堅工務店などの住宅会社を候補にしているという方には、とても都合の良い場所です。ハウスメーカーの住宅の場合、一見同じように見える住宅でも、構造的な特徴に違いがあり、得意な間取りや仕様が異なります。モデルルームでは、通常では見られない壁の中の構造や床下配管を見やすく展示してあったり、その内容をスタッフから直接教えてもらえたりするので、住宅への理解が高まります。 建物の設備や仕様について言えば、全館空調や無垢フローリングの床暖房など、体感してみないとわからないものが展示してあるため、それらを検討している方にとっては行く価値があります。
また、住宅展示場の運営は、出店している個々の住宅会社と別の会社が行っているため、公平中立なスタンスで全体を見ることができます。また、土地探しや資金計画など、住宅を建てる際に必要な共通の情報については、無料の相談会を開催していたり、資料などの準備があったりするので便利です。このように、説明を受けないとわからない会社ごとの違いや、家を建てる基本情報を集めたい方にとっては、住宅展示場に行くメリットは大きいと言えます。
一方、デメリットとしては、住宅展示場では、それぞれの会社が他社との差別化のため、高級すぎる大きな家に、非常に高価な設備が展示されている場合があります。そのため、理想と現実の違いを常に意識しながら見る努力が必要になります。また、住宅展示場に行くと、まず、住所や連絡先など、アンケートを書く必要があるため、大変詳しく説明してくれるのは良いのですが、その後の別の展示会や見学会へのお誘いの営業電話やDMが必ず届きます。もちろん書かなくても良い場合もありますが、その場合は、自分で見学するのみと割り切る必要があるでしょう。検討後、選択肢から外れた会社に対しては、お断りの連絡をすれば問題ないのですが、そのようなことを煩わしいと感じる方も多いのも事実です。また、出店している会社が20社以上の場合もあり、全て1日で見て回ることは、なかなか難しいでしょう。全てを見て判断しようとすると、何度も足を運ぶ時間がかかるというデメリットがあります。また、目移りして、自分の求めているものを見失う可能性もあります。必要なものを明確に認識し、予算オーバーにならないように注意が必要です。
完成見学会のメリットは、注文を受けて建てられた現実的な建物を見ることができることです。住宅街に建てられた建物なら、エントランスや駐車場の配置や採光やプライバシーの確保の仕方など、設計の意図までしっかり確認できます。また、工務店や設計事務所が得意としている素材の使い方やデザインを見ることができます。特に無垢フローリングなどの小さなサンプルではその質感が分かりにくいものものや、珪藻土やしっくいなどの自然素材など、触れて触って感じることができます。そして、一番のメリットは、その建物の設計者に直接話を聞くことができる可能性があることです。設計事務所に依頼する場合には、見学会場の家を建てた建築士さんに依頼することも多いと思いますので、その方との相性を確かめることができる良い機会となります。
デメリットとしては、完成見学会のイメージが良すぎて、その建物を建てられる条件の土地がなかった場合に、ストレスを感じたり、要望に無理が出て、プランが堂々巡りになってしまうことでしょう。逆に、個性がある建物の場合、印象が強すぎて、自分が目指すものと違うと感じた場合に、そこでその会社を判断してしまうことがあるかもしれません。完成見学会で得られる情報は、非常に重要ではありますが、他の情報が少ない場合に、それだけで判断する可能性が、気をつけておきたいデメリットになります。また、完成見学会は、行きたいタイミングに開催されていないこともあり、完成見学会を見てから、判断したくても、それが難しい場合もあります。その場合は、完成見学会に行ける会社から選ぶか、その他の会社も選択肢に入れるかを考える必要があります。
このように、住宅展示場や完成見学会は、非常に有益な部分が多いのですが、情報の受け取り方によって、メリットにもデメリットになってしまいます。「過ぎたるは及ばざるが如し」ということわざがあるように、情報量も多すぎると決めることができなくなってきます。予算や住宅性能、デザイン、担当者との相性などから、自分にあった会社を絞り込んでいくことが大切です。