設計主旨
建築主は、身体的ハンディキャップを持たれています。現在は手摺などを頼りに自力歩行されていますが、将来的には車椅子が必要と予想されます。このような状況を踏まえて出された要望は、「車椅子を前面に押し出した設計ではなく、できるだけ歩いて移動する、積極的な生活のできる家にしてください」というものでした。
その応えとして、段差をまったくつけないことはもちろん、玄関以外はすべて引き戸とし、動線には手摺をつけました。左右の手摺に同時に掴まることができるように、各部寸法は際立って大きくすることは避け、ほぼ一般的なメーターモジュールで小型車椅子で移動可能な最低寸法としています。
配置計画
敷地周辺は緑が多く、古くから開発された宅地で高低差に富んでいます。敷地形状は間口10.5m奥行き13.3mの南北に長い長方形です。決して広いといえないこの敷地の約2割が駐車スペースとなり、またアプローチも絶対条件です。さらに敷地境界線から壁面線1mセットバックの法的条件により、配置条件は自ずと決定づけられてきました。
光と風を取り込むツインキャンティ(2つの片持ち空間)
2階の子供室と主寝室は、それぞれ5m、4mのキャンティレバーの構造としています。従ってそれらの1階部分は十分な駐車スペース(風の通り道)として機能し、リビングは3方向をガラススクリーンで構成することができたのです。
1階平面
前面道路を動の空間とすると、居室には静の空間が求められます。「静」をつくるために、道路に面した駐車スペースと居室の間には中庭を設けました(緩衝体)。そして、駐車がしやすいこともハンディキャップを持つ建築主には大切なことです。
これらの機能を、前面道路からヒエラルキーをつけるように、リニアに配しました。
2階平面
中庭を中心としてコの字形に開いた居室を配置し、外に向かっての開口部は、光や風、あるいは空といった自然を感じられる空間となっています。
外壁はフロストガラスによるダブルスキンを使用しています。それにより空気層が密閉され、断熱性能を通常の2倍近くまで向上しました。
駐車スペースから流れこむ風
すべての居室は中庭に向かって開放されており、溢れる光を感じることができます。また駐車スペースからは心地よい風が流れ込み、光と風が快適さと幸福感を与えてくれます。自然との一体感を感じるために、床と天井には天然木の無垢シルバーパインを使い、蜜蝋ワックスを染みこませて仕上げました。また木の表面に膜をつくらないことで木が本来持っている調湿効果を発揮しますので、湿度の高い日でも爽快に過ごせます。もちろん、自然素材を使うことはシックハウスの配慮でもあります。
3方向のガラススクリーン
リビングの3方向をガラスにした構成は、リビングから中庭を眺めるというより、中庭の中で過ごしている感覚を作り出し、開放感を与えてくれます。
床冷暖房
各居室は2重床を採用し、その空間を利用して空気を流し、床冷暖房としています。部屋全体を冷やしたり温めたりする必要が無いため、効率も良く、何より身体にやさしい快適な冷暖房となっています。
現場所在地 | 川崎市 |
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構造 | RC造+木造 |
階数 | 2階 |
工務店 | フューモ |
家族構成 | 3人 |
敷地面積 | 140㎡ |
延床面積 | 120㎡ |
建築費用 | 3000万円台 |
ウォークインクローゼット(以下WIC)はもう当たり前になった感ありますね。 クローゼットとしてはもちろん、収納スペースとしても大活躍するWICの実力を見ていきましょう。