昭和10年代に建った四軒長屋の1住戸をフルリノベーション。
クライアントは、まとまった休みにあちこちと海外へ出掛ける。特に北欧が好きで、中でも青に惹かれるという。青というのは奥行きの深い色だ。この計画が目指したのは「碧(あお)」。
テーマカラーとなった濃い青が随所にちりばめられている。
■築80年。母娘二人暮らしの長屋
クライアントはお母様と2人暮らし。2階奥には洗濯干場があったのだが、お母様は踏み台を置いて外にでていた。こういった上下移動の障害がリノベーションの動機になることは多い。人は重力には抗えないのだ。
【リノベーション前】

【リノベーション後】
エントランスとキッチン
2階へ上がる階段は向きを付け替え、階段上のトップライトから1階奥のお母様の寝室まで光を届ける。
1階奥には裏庭があったが、ここはタイル貼りとし、防犯を維持したまま風を通すドアを取り付けた。ただの通路から、価値ある空間になったのではないかと思う。
お手洗いのテーマは「不思議の国のアリス」ペーパーホルダーなどこだわりを散りばめてある。
色を塗るのではなく、汚れを丁寧に落とした。
これは監督からの提案だった。
「折角なら、色を付けるのでなく垢を落としてあげましょう」
という考えだ。
色を付けるより余程手間のかかる仕事で、物に対する敬意が
なければ出てこない考えだ。一も二もなく賛成した。
はしごはディティールにこだわる。
クライアントが北欧旅行で集めた小物が置ける。
ヤコブセンデザインのドロップチェアが置かれたロフト
通り庭をはさんである洗面・脱衣室。
トップライトの光がお母様の寝室にも漏れ落ちるように
なっている。
長屋の北側を、どうすれば心地よい空間にできるか。
様々なトライをしてきた。
2階バルコニーで干している洗濯物を、急な雨の際に持って
入れる室内干しエリア。春には花粉対策にもなる。
この家の特徴のひとつだ。
ここは洗面と逆で、腰下を水色とした。
造作棚
キッチン前のタイル。造作棚とあわせて。
映画「かもめ食堂」でも使われていたケトルがよく似合う。