一般に、人は東西に長い土地をよしとする。陽のあたる南側が長いからだ。しかも南に道路があれば、隣家の影もこないし理想的に感じられるのかもしれない。
南の陽射しは強くてまぶしい。リビングから庭をながめても逆光だから、庭木も塀も陰の部分を見ることになる。その向こうが道路や空き地ならそちらの方が明るくきれいだ。
つまり、太陽を背にしてながめた方が景色は明るく、緑も美しく、かつまぶしくないのはそのためだ。そこから”北の庭”の発想が出てくる。京都にも明るくてまぶしくない北側の庭園が多い。
北の庭を良くするには建物の影が出ないようにする必要がある。平屋が理想だが、南北に長い建物なら南側が二階、中庭を挟んで北側が平屋という手もある。
細長い土地では中庭が有効だ。中庭を通して光や風を採り込んで各部屋の空間の質を上げ、長くなりがちな廊下の重苦しさも解消できる。
むずかしそうな土地でも、工夫やアイデアでなんとか快適な家に仕立てるのが設計の仕事です。