最近は全く和室がない家もあるようです。確かに今の暮らし方にはなくても大丈夫な部屋かもしれません。でも、家の中に和の空間がある、それだけで心がほどけていくような感じがしませんか。また、和室があると家の印象がキリッと引き締まるような気がするのは私だけでしょうか。当然ですが、和室は日本だけのものですから、外国の真似ではなく紛れもないオリジナル、そこには建築士さんや職人さんの自信がみなぎっています。新しさと懐かしさが交錯する今どきの和室、以前の和室とは少しイメージが違うけれども、ほっとする感じは同じ。ああ、日本に生まれて良かったと実感する一瞬です。
伝統と新しさが入り混じる
上品で高級感のあるこの和室。人気の琉球畳を市松模様に敷き、和室にはあまり使われない大きな窓、それだけ聞くと今どきの和室?と想像してしまいますが、目で見るとしっくりとなじんだイメージです。天井・壁・床と色のトーンをひとつにしているからでしょうか。エアコンを壁の中に埋込設置にし、照明もダウンライトを用いるなど空間を広くすっきり見せる工夫も、奥ゆかしさを感じさせる和室の演出として効果ありです。
明るさの中の静寂
和室をひとつの部屋として区切らずに、空間の中に演出するのも最近好まれる仕様。和室イコール暗いという昔のイメージを180°覆す明るい和の演出にハッとさせられます。大きな窓の向こうに見える日常の何気ない風景も美しく、絵画か掛け軸のような見事な借景です。玄関を入ってすぐひとつの部屋が取れる場所ですが、美しい景色を訪れる人皆に楽しんでもらいたいと思う施主様の心遣いが、そのような和の空間を作ったのでしょうか。
個性的な組み合わせがシックになる
おおよそ和室の概念とはほど遠い部屋でありながら、なぜか見事に落ち着きを演出しているこの部屋。窓の外のカーテンウォールとカラー畳で個性的な部屋であるにもかかわらず、全体的にモノトーンの印象がシックな空気感を醸し出しています。傾斜天井をめいっぱい利用した部屋なので広さもあり、和室とはいえ様々な用途に利用できそうです。小さい子供さんの居るお宅なら、ここで思う存分転げ回って遊べます。遊び疲れたらそのままお昼寝、気持ち良さそうですね。
褪せない和室
通常の畳よりも割高になるものの、人気があるのはやはり琉球畳。正方形の形が洋風の暮らしにもマッチし、和室の重いイメージを払拭します。市松模様にしてオシャレに使えるのも琉球畳ならでは。さらに、長い歳月を経ても輝きが褪せない金箔を押した襖を採用してモダンな和室に仕上げています。襖に合わせた柔らかい色合いの壁と和紙調の窓のシェードが全体をほんのりと優しい空間にしています。心がほっとする和室です。
お客様を迎えるハレの部屋
昔日本では、日常を「ケ」の日、祭りや祝いごとなどの日を「ハレ」の日と呼び、日常と非日常を使い分けていました。家屋もハレとケの日では装飾を替えて特別感を演出していました。今はそういう習慣もほぼなくなっていますが、ハレの部屋を造っておくと、お客様が来られた時にも慌てることもありませんね。玄関からすぐの所にある部屋。洋と和が絶妙にミックスして落ち着きを感じます。窓からは四季折々の植物が訪れる人の目を楽しませます。
高低差が居心地の良さに繋がる
小上がりの和室は最近では珍しくなくなりました。メリットとしては、小上がり部分をダイニングのイス替わりに使えたり、足腰の弱い人が座位のまま移乗・移動しやすいこと、段差を利用して収納場所を造れること等があります。また、1段上がることで部屋に奥行きを感じさせ、本来よりも広く見えます。写真の和室は段差でリビングとダイニングを分割させ、食事を楽しむ所と憩う所を明確に分けています。床、建具、枠、座卓などを同じ赤茶色の木で統一しているので、まとまりを感じます。
拡がりを感じる和みの部屋
和室とは本来そんなに高さを感じさせない部屋です。昔ながらの和室では最近の若者は例外なく、建具の枠や欄間に頭をぶつけて非常に痛い思いをしています。けれどもこの和室はとても高さを感じます。和室には珍しい天井までの掃き出し窓、作り付けクローゼットも目いっぱいの高さで、縦のラインが強調されています。畳は色違いの市松敷の周囲を板の間が回っているので、まるでカーペット敷の洋室と見間違えるほど。堅苦しい和室は苦手という方にも受け入れられやすそうですね。
欲しいところに明かりが届く
薄暗くなりがちな和室をいかにして明るくするかを見事にクリアした和室です。中庭からの光だけでは十分でない採光を、天窓から取り入れています。本来なら欄間や壁があるべき建具の上を空間にすることで光も取り入れ、狭さも緩和しています。とはいえ、やはり十分とは言えない広さを、雪見障子を採用して解放間を演出しています。障子を通してみる中庭は絵画のように見事で、計算された美しさを感じます。
柔らかいのに引き締まる空間
和室は洋室とは全然造作が違うと、かつて大工さんから聞いたものです。それほど和室から洋室あるいは逆へのリフォームは手間がかかるものでしたが、写真のような和室であれば大事にしなくても模様替えすることができそうです。全体を見ればほぼ洋室の雰囲気ですが、置き畳と無垢板の天井・床が落ち着きを醸し出し、白いクロスが和の静寂を強調しています。床の間もありしつらいは立派な和室。洋風の家の中でここには凛とした空気が流れています。
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ライター/writer さんたまる